OL編

新卒で入社した貿易商社。わたしはそこで社会人としての第一歩を踏み出しました。
会社は地下1階、地上5階の自社ビルで、わたしが配属された部署は5階にありました。
5階に配属された新人は2人で、わたしたちは期待と不安を胸に働き始めました。

当時の商社は女子社員の回転が早く、3、4年で大半が寿退社して行きました。5階には何人かの女子社員がいて、多くは入社3、4年以内の若い人たちですが、中には「お局様」と呼ばれるベテランの女子社員もいました。
新人にとってお局様はとても怖い存在でした。親切とはほど遠く、些細なことで厭味を言われたり、ヒステリーを起こされたり—————

わたしは決意しましたよ。いつか、わたしの下に新人が入って来たら、絶対に優しくて親切な先輩になってやると。このお局様のようには絶対ならないと。何より、3年か4年で絶対に寿退社してやると。

2年経ち、3年経ち、同期の女子社員が1人2人と寿退社し始めました。
4年経ち、5年経ち、ついに同期は2人になってしまいました。
社内には既に何人もの後輩たちが入社して来ていました。その後輩たちの言葉遣いや態度に「?」と思い始めたのは3年目ぐらいからで、そのうち、後輩たちの態度が段々と腹立たしく思えて来るようになりました。
気が付かない、気が利かない。こちらから言わないと何もしない。そのくせ文句だけは言う。先輩を友達だと思っている。
何なんだ、コイツらは。わたしはそのたびに後輩たちに注意するようになっていました。

あるとき、わたしが更衣室に入ろうとすると、後輩たちが喋っているのが聴こえてきました。
「○○先輩って怖いよね。あの人に嫌われたらこの会社には絶対いられないよね」

わたしのことだったのです。
わたしが新人のころ、口うるさく厭味ばかり言う先輩を見て、絶対にああはなりたくないと決意したはずなのに。優しい先輩になるつもりだったのに。
だけど自分が「お局様」に近い領域になった今、後輩たちから恐れられていたのです。

こんなはずじゃなかったのに。

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